就職氷河期世代——“失われた20年”を生き抜いた私たちのリアル

コラム・つぶやき

はじめに

「就職氷河期世代」。
この言葉を聞いて、胸の奥にチクリと刺さる感覚を覚える人は少なくありません。1970年代前半〜1980年代前半に生まれ、1993年〜2005年ごろに就職活動をしていた世代。まさにバブル崩壊の直撃を受けた年代です。企業は採用を大幅に縮小し、求人倍率は歴史的な低水準へ。努力しても報われにくい環境で社会に出た世代と言えます。

この記事では、就職氷河期世代がどのような環境を歩み、どんな課題を抱え、その中でどんな強さを育んできたのか。データとリアルな肌感覚を交えながら、深く掘り下げていきます。

バブル崩壊とともに訪れた「採用ゼロの時代」

就職氷河期とは、単なる景気低迷の話ではありません。“新卒をほとんど採らない時代”という、日本の雇用システムの前提を根底から崩す現象でした。

新卒一括採用、終身雇用、年功序列。これらは「早く正社員になれれば、その後の人生はある程度安定する」という前提で成り立っています。しかし氷河期世代は、その入口にすら立てませんでした。

当時はこんな状況でした。

  • 説明会に申し込んでも定員オーバーで参加できない
  • 書類を送っても返事が来ない
  • 内定ゼロのまま卒業する学生が多数
  • 非正規雇用の仕事しか選択肢がない

この時期に大学卒業を迎えた人たちにとって、希望より“不安の濃い色”が社会全体を覆っていました。

非正規雇用が人生を大きく左右した

氷河期世代の多くは、新卒カードを使えずに社会へ出ました。結果、派遣・アルバイト・契約社員など、非正規でのキャリアが長くなる人が増加。問題は、当時の日本では「非正規→正社員」のルートが極端に狭かったことです。

本来、20代はキャリアの基盤を作る大事な時期。しかし氷河期世代は、その時期に「職歴が積みにくい雇用形態」で働くしかありませんでした。その積み重ねが、30代・40代以降の収入格差として表面化していきます。

ある試算では、同年代の正社員と比べて生涯賃金が3000万〜5000万円ほど差がつく可能性があるとされています。これは個人の努力や性格ではなく、「環境の差」が作り出したものです。

結婚・家庭・老後にも影響を及ぼす“負の連鎖”

キャリアの出だしでつまずくと、人生の他の領域にも影響が出ます。

結婚

安定収入が確保しづらければ、結婚に踏み切ることが難しくなります。氷河期世代の未婚率が高い原因のひとつと考えられています。

子育て

非正規雇用のままでは、子どもを育てる経済的な余裕が持てず、家庭形成に消極的になるケースが増えました。

老後

年金も不安定になりがちです。
厚生年金に加入していない期間が長ければ、受給額が低くなるのは当然です。「老後のための貯金が難しかった」これは多くの氷河期世代が抱える共通の課題です。

国の支援は「後手に回った」

氷河期世代は、長い間「自助努力に任せられた世代」とも言われます。他の世代と比べても、国の支援策が動き出すまでに多くの時間がかかりました。

2020年頃から国や自治体で本格的な対策が始まりましたが、すでに当時の氷河期世代は40代。支援が届いた頃には“人生後半”に差しかかっていたのが実情です。

  • 正社員登用枠の拡大
  • 行政の就労支援
  • 企業の採用補助金
  • 社会参加プログラム

これらは徐々に増えてはきたものの、「もっと早ければ…」という声が多いのも事実です。

それでもこの世代は“しなやかに強い”

氷河期世代には、他の世代にはない強さがあります。

我慢強い

不安定な雇用を乗り越えて仕事を続けてきた。

コスパ感覚・節約スキルが高い

不況期が長かったため、お金の使い方が堅実。

デジタルとアナログ両方に強い

昭和・平成・令和。すべての時代をリアルに経験した、バランスの良さ。

真面目で誠実

就職難の経験から“働けることへの感謝”を持つ人が多い。

これは単なる精神論ではなく、世代の特徴としてしばしば語られることです。氷河期世代は「逆境の中で生き抜く力」を自然と身に付けてきました。

40代後半〜50代になった今、社会の中で再び存在感が増している

最近、メディアやSNSで氷河期世代が取り上げられる機会が増えています。それは、この世代が社会の中心へ差しかかっているからです。

  • 管理職候補になる年齢
  • 消費力が最も高まる時期
  • 子育て・介護・仕事が重なる“人生の密度が濃い年代”
  • 社会経験が豊富で発信力もある

さらに、SNSで声を上げる人が増え、氷河期世代の価値観や思いが共有されやすくなったことも大きな要因です。

就職氷河期世代は「失われた世代」ではない

長年、「ロストジェネレーション」「失われた世代」と呼ばれてきた氷河期世代。しかし、私はこの呼び名がしっくりきません。この世代は“失われた”のではなく、“奪われた”のです。そしてその中でも、自分の道を切り開き、社会に価値を生み続けてきました。

時代の不運に巻き込まれながらも、しなやかに生き抜いてきた世代。
誰よりも厳しいスタートラインだったにも関わらず、静かに努力し続けてきた世代。

氷河期世代は、もっと評価されるべき存在です。

おわりに

就職氷河期世代の歩んできた道は決して平坦ではありませんでした。しかし、その経験があるからこそ、この世代には深い強さと優しさがあります。

これからの社会は、氷河期世代のしなやかな知恵と経験を必要としています。
そして、氷河期世代が自分たちの歩みを語り始めた今こそ、過去の痛みを未来への力に変えるタイミングなのかもしれません。